甲斐の武田屋敷に招かれた政宗は
夜、あてがわれた部屋で独り静かに物思いに耽っていた。
相当深く考えているらしく
暫く微動だにしていなかったが
ふと顔を上げ天井に視線を向ける。
「HEY真田の忍。
居るんだろ？ 出て来いよ」
「……」
「OK、穴が開いたらアンタのせいな」
「ちょ、何する気？！」
「HELL DRAGON」
しれっと技の名前を応える政宗の瞳に本気を見て慌て
佐助は阻止しようと目の前に舞い降りた。
「止めてくんない？！
何刀構えてんの危なかったなもう！
撃てなくて残念みたいな表情もよしてよ！」
「ちっ」
「舌打ちもしないの！
…で、何の用？」
「覗き見されんのは好きじゃねぇんだよ。
居るんなら姿見せてろ。
それができねぇなら居なくなれ」
「…それだけ？」
「重要だろうが。」
それじゃ、と姿を消そうとする佐助を、
「…Ａｈ、待て」
はっとなにかを思いついた政宗は引き止めた。
「虎のオッサンに聴いたんだが、
アンタ分身とか変化が出来るんだよな？ その合わせ技も。
前、虎のオッサンや真田幸村に化けたって聴いたぜ」
「お館様…何で忍の技を味方じゃない人ににバラしちゃうの。
死活問題なんだけど」
「今更だろ。
それより、俺にも化けてみてくんねぇか？」
「…何で」
「出来ねえのか？
目の前に見本がいんのに」
「口車になんか乗らないよ？
やる必要なんかないでしょって言ってんの」
「客人をもてなす気持ちはねぇのか」
「もてなすとかとは違くない？
…まあいいよ。
そこまで言うなら…えいっ」
佐助は根負けし、
ぼわんと音を立て政宗に変身した。
着ている服も兜を脱いだ蒼い陣羽織姿―目の前の政宗と同じもので。
「ま、perfectではねぇがまずまずの出来だな。
じゃあ後は任せた」
「は？ 任せる？
って何を？」
「アンタの主人の相手」
「相手？
…ってまさか！」
昼日中ならまだしも、夜、相手をする、という事は
刃を交える事ではないだろう。
「アンタなら血気盛んな若人を受け流せるだろ」
「ちょ、アンタ最初からそのつもりでっ？！」
「だとしたら―っ？」
「逃がさないっ！」
政宗の姿をした佐助が勢い任せでがばりと押し倒した時。
「政宗殿。幸村に御座います。
失礼して入りますぞ。…？」
すっと襖が開かれた。
「…返事待ってから入らないと本当に失礼だからね旦那」
佐助は思わず教育的指導をした。が。
「まっ、政宗殿が二人…？！
しかもはははは破廉恥な行いをなさろうとしているように見受けられ…っ！
何と倒錯的な光景であることか…っ！」
幸村の耳には入っていないようだ。
佐助と政宗は呆れ果てる。
「旦那旦那。
こっちは俺様」
「俺様？
はて、政宗殿から佐助の声が聴こえるが」
「うん、だから俺様だって。
待ってて今変化を―」
「待てぃ佐助！」
「はいぃ？」
腹からの声に制されて、佐助は驚き動きを止めた。
幸村の大声に慣れていないわけではないが
いきなりでは心臓に悪い。
「要するに、
今上になっている政宗殿はお主が化けておるのだな佐助」
「そうだけど？」
「ならば暫く変化を解くことはない」
「真田幸村？ アンタ一体何を」
組み敷かれている本物の政宗は
一体何を言い出したのか、と瞬きをする。
「政宗殿が政宗殿と睦み合っておられる様子の
何と耽美な事か…！」
「…アンタ結構変態なんだな…」
「…多分アンタに対してだけだよ竜の旦那」
若干引き気味の政宗に
変化を保ったままの佐助は一応主のフォローをする。
「けどそーゆー事なら旦那、
俺様竜の旦那の相手しちゃっても良い？
この姿で」
「は？！
テメー何…っ！」
唇を塞がれ抗議の声を奪われる。
「っは…っ」
「俺様は自分の姿見えないから問題ないんだよね。
でも折角だから」
「…？」
「楽しませてくれよ？
…なんて」
政宗の声と台詞を真似た後、
自信の声でおどけてみせた。
「ってめ…！」
「おっと。」
カッとなった政宗の攻撃を避け、
後ろから羽交い締める。
「観念しなよ」
「出来るか！
っ真田！」
二人の絡みをぼーっと視ていた幸村は、
名を呼ばれやっとはっと我に返った。
「これで某も混ざれば両手に花…？」
「混ざるのはいーけどちゃんと本物の相手してよね」
「安心せい佐助。
政宗殿を間違えたりはせん」
「…っwhait…！」
「あはは。御免意味わかんない」
「わかってんだろ…っやめ…！
っあ」
二人がかりで身体をまさぐられる。
思ってもいない展開に政宗は唇を噛んだ。
「shit！ 何でこんな事に…っ」
「あれだよね。自業自得ってやつ？」
目の前でにっこり笑う自分と同じ顔をしている男の貌の裏に
元の佐助の顔が透けて見えた。
【会話文だけのＲ１５な続】
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英雄外伝の佐助の技からの妄想。
変化ネタはたぁのしぃねぇ。
佐助は分身もできるんだよねー…
【２０１０１１１０～２０１０１１２４ ；拍手御礼用】