小太郎 / 竜飛疾駆没ネタ

 

政宗は、
気まぐれに単身小田原城を訪れた。

「ようジイサン。元気か?」
「むむ。貴様は伊達の小わっぱ。
元気なものか! わしの城がこんな状態なのぢゃぞ!
何しに来たのぢゃ!」

ぷんすか怒る北条に、
政宗はニヤっと笑みを浮かべる。

「相変わらずだな。
いやなに。
天下が俺のモンになるのも時間の問題になった事だし
この城の名物の桜ってのがどんな具合なのか確かめとこうかと思ってな」
「糞生意気な小僧め!
天下がどうなろうと
この城はわしが御先祖様から受け継いだ大切なモンぢゃぞ!
それに桜なぞ疾うに散っておるわ」

ちゃきっと武器を構える北条に、
「判ってるってちったぁ落ち着きなよ。」
政宗はまあまあと両手を動かす。

「つーか別に戦いに来た訳じゃねーんだ。
少しは愛想良く出迎えてくれよ」
「何を言ってお…ぬ。
そう言えばお主、いつもと雰囲気が違うのう。
兜もかぶっとらんし、
蒼い陣羽織はどうした?」
「ah、ちっと色々あってな。
新しく作り直してるところだ」

黒に近い紫色の、水玉をあしらった陣羽織を羽織った政宗が
そう答えた時、
疾風がその場に舞い降りた。

「…っ!」
「…………」
「風魔?
呼んでもおらんのに姿を現すとは珍しいのう」

北条と政宗の間に立った風魔は
「……」
無言で、微動だにせず、
じっと政宗を見つめているようだ。

「初めまして、でもねぇか。
よぉ、風魔」
「一体どうしたと言うんぢゃ風魔」
「………」
「…ああ。」

見えない目線の意図を察し、
政宗は纏った服を強調するように立って見せた。

「似合うか?」
「………」

政宗の問い掛けに、
風魔の頭が頷くように小さく動いた。

「なんと」
「THANKS、風魔…
…ah、小太郎?」
「………!」

素直な笑顔を浮かべた政宗の感謝の言葉に、
風魔は慌てたように風を起こし姿を消した。

「ち。逃げられたか」
「お主、まさか風魔をたぶらかしに来たわけではあるまいな」
「ham? 無茶言うなよジイサン。
アレが誘惑に乗るタマかよ」
「そうか?
乗りかけたように見えたがのう。
あんな反応をする風魔なんぞ初めて観たわい」

北条の太鼓判のような言葉に、
政宗は驚きを浮かべ、
次いで目を細めて肩を竦めた。
擽ったそうに。

まるで、
なつくとは思ってもいなかった動物に好かれたような感覚だった。

「じゃあなジイサン。また来るぜ」
用が済んだとばかりにくるりと身を翻し立ち去る政宗に
「本当に何しに来たのぢゃ…」
北条は首を傾げた。

「まさか本当に風魔目当てだったんじゃあるまいな」

目当て、と言うより、
「向こう」の小太郎がデザインした衣裳を風魔に見せてみたかった。
喋らないと聴いていたから期待はしていなかったが
まさかあそこまで好意的な反応をしてくれるとは。

「乗り換えちまおうかな」
「そう言う事を
独りで居るときにしれっと言わないでくんない?
本気に聴こえるから」
「独りじゃなかったろ?」
傍に居る事をわかっていたような言葉に、
「……」
佐助は、はあぁ~っと深く長い溜め息を吐いた。

「ほんっと喰えないお人だよね、アンタ」
「ah?
最後まで喰っといて何言ってやがる」
「……!」

佐助は、たまらず政宗をぎゅっと抱き締めた。


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没理由→小太郎が佐助を抹殺しての風政になりかねない

                     【20101119~20101207;拍手御礼用】