artificial eye


※日就月將 没設定小話 政宗視点。※
 

「変えたのか」

唐突に元就に言われてびっくりする。
とんとん、とその場所を示して見せられなくても
何を指しているのかはわかっていた。

「…気付いてたのか」
「近くでじっくり観なくてはわからなかったが」
「父さんの努力の結晶だからな」

「何の話だ?」
きょとんとしている元親に、
説明しようと俺が口を開くより先に
「貴様が就職先を決めたときのエピソードを思い出せ」
元就がそう口にした。

「へ?」
元親はまだ合点がいっていないようだったが
「…あ」
俺の頭には父さんの言葉が浮かんでいた。

「俺が決め手にしたのって…
確か本社の社長の…
あ?」
元親は俺をまじまじと見つめた。
正確には、俺の右目を。

「息子に眼をプレゼントしたい」
それは一時期父さんが会社を発展させるモチベーションとして語っていた言葉だ。

俺は子供の頃に右目を失くした。
理由は伊達政宗とは違うものだが。

以来、父さんは義眼の分野にも手を伸ばした。
俺が、コンプレックスとしないように
より良い、機能も見た目も付ける人に負担がかからない物を作ろうと。

「アンタだろ元親。
何年か前、父さんの申し出を蹴った
隻眼の新入社員って。」

当時、父さんが泣きついてきたのを憶えている。
隻眼の新入社員の事を知り、
だが忙しくて直接は逢いに行けず
部下、元親の直接の上司に頼んだとの事なのだが。

「費用は全て負担するから義眼を付けてみないか」
そう切り出したら
「俺に無料でくれるってんなら
その分望んでる人達に安く提供してやってくれ…下さいよ」
と断られたと。

どうにも言い方が悪かったらしく、
以来同じ話を持ち出せずにいると。

「実際付けた人間の意見が必要だろ。
たまに呼ばれてモニターとして不定期に新作とか試してる。
もう一人ぐらいいると楽なんだがな?」

目配せしてやると
元親ははっと気付き、頭を抱えた。

「うわ。あれってそういう意味か!
なあ、なら、今からでも親父さんに協力するって話してくんねーか?!」
「All Right!
父さんも喜ぶと思うぜ?」

言った後で、冷静になって考える。
もしかしたら。
「何かポリシーがあって人工物は入れないとかじゃないんだよな?」
一応確認してみる。
無理強いするつもりはない。

「こやつがそんな複雑な事を考えておるわけがなかろう。」
「残念だが元就の言う通りだ。
機会がなかっただけだぜ」
その折角の機会を一度自ら退けた訳か。

「なら改めて宜しくな、元親。」
「……」
「な、何だ?」

二人からやたら鋭く見つめられて
ぞくりとする。
こいつら、対照的だが揃って男前だから迫力があるんだよな。
…俺は片方―元就には、特に弱いし。

「いやなに」
「アンタやっぱ普通に親父さんの後継ぐの向いてるんじゃねーか?
ってな」
「…不本意ながら同感だ。」

二人が俺の何を視てそう感じたのかはわからないが。

「あー無理無理。
言ったろ?」

顔の前で手を横に振り、
にっと笑って見せる。

「俺は元就の嫁サンになる予定だからな」

今度は、冗談と誤魔化さなくても良い筈だ。


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没理由→義眼の事は良くわからなかった…
隻眼まで同じにしなくてもいいかな?と思った。
没設定だけどアリといえばアリでいけます。

                                   【20101123~20101207; 拍手御礼用】