第二衣装 / 竜飛疾駆閑話

 

 

大阪城から引き返した伊達軍は、
再び進軍予定があるのだからと
本拠地である遠い奥州には戻らず
少し前に降した毛利領に一時的に陣を敷いた。

軍の中心である二人は
陣の一番奥で膝を突き合わせる。

真剣な表情で交わしていたのは話は
戦についてではなく戦場でいつの間にか変わった政宗の召し物についてだった。

何故、どのようにして、の疑問はあったがそれよりも。

「それで政宗、
着ておられた蒼い陣羽織と月の前立ての兜は如何なされました」
「…ah。
置いてきた」
「…なんと?」
何処に?と問われる前に
「悪い」
謝り、
「けど、この服だって悪かねぇだろ?」
と話を反らす。

「確かに良くお似合いですが、
そのような問題では御座いませぬ!」

小十郎はきりりとまなじりを上げる。
己の主の奔放さは理解していたつもりだ。
一度大敗を喫し少しは落ち着いたかと思いきや
怒りを吹っ切ったらこれである。

「お脱ぎ下さい」
「…ぱーどぅん?」
「どこのどいつが拵えたのか存じませぬが
しかと検分いたしませんと。
ささ、早く脱いで下さい」
「こ、小十郎?」

笑顔を浮かべているが、目が笑っていない。
仕方がないので、渋渋ながら従う。
元元装備をほどく予定ではあったのだし
着替えの着流しは用意されていたので。

「それにその衣装、背中が淋しく感じます。
伊達の家紋をお入れしても?」
「…好きにしろ」

どこかしらに手を加えたいのだろう。
そう取った政宗はあっさり承諾した。

そして脱いだ衣装から、「佐助」の写真が出てきて
反射的に小十郎がそれを細切れにし
政宗が独り外に出て
「佐助」に遭遇することになる。


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 第二衣装の背中に家紋がある事を失念していました。

                          【20101127~20101207; 拍手御礼用】