幸村さんが西軍に入りました。

 

 

幸村は佐助のみを引き連れ大阪城を訪れた。

同盟を果たすため面会した西軍大将・石田三成に
家康との戦いを望む理由を問われ、
幸村は信玄が望んだから、と答える。
だが。

「それだけか。」
重ねて訊かれ、
「否…そして…」
幸村はぐっと拳を握った。

「政宗殿が徳川殿と手を組まれた故にてござる!」
徳川殿を倒し政宗殿を我が手中に!
とまで叫ぶ幸村に、
三成は目を丸くした後
「…なんだと?」
低く返す。

「ちょ、旦那? じゃなかった大将!
何言っちゃってんの?!」
三成の機嫌が悪くなったのを感じ取ると
控えていた佐助は慌てて止めに入った。

「む。だが包み隠さず話さねば信用しては貰えぬであろう?」
幸村はいたく生真面目な表情で、
心底不思議そうに首を傾げる。
佐助は目を細め顔の前で手を振った。

「いやそこは隠しとこう黙っとこう。」

三成は取り込み中の真田主従は無視し隣の大谷に顔を向ける。
「刑部。マサムネドノとは誰だ」
「小田原でぬしに敗けた蛇よ」
「小田原…秀吉様の元存分に刀を振るった戦い…」

三成は思い出すように遠くを眺めた。
が、ふと、眉を潜める。

「…そのような者がいたか?
私に敗けて生き延びた者など。」
「確かに、主が取り零すなど珍しい事よな」
大谷は首を傾げた。

三成は秀吉に刃向かうものは全て殲滅してきていた。
政宗に止めをさす時間がなかった、と言うわけでもあるまい。
半兵衛や秀吉に生かすよう言われていたならばそれに従ったという事だろうが
彼等の命令を忘れる三成ではない。
記憶にないと言うことはおそらく違う。

佐助は、その会話を耳に入れると「んー」と口を歪めた。

「…大将、
小声で答えて欲しいんだけど、
同盟を決意した理由…も一個あるよね?」
「応。政宗殿は、
…小田原の一件以来、石田殿を何より誰より気にして、
此度の戦の最後の相手と心に決めておられる様子。
なれば、石田殿の軍に付いたとなれば、
少しは意識をこちらに向けてくれるであろうと」

片想いの相手を振り向かせようとしてるかのような健気さだ。
多分譬喩ではなくそのまんまだ。

佐助はぎこちなく笑う。

「うん。
やっぱそれは内緒にしておこうねー。
どうやら」

「なれば単に生命力が強かっただけと言うことか。
まこと命根性の穢き男よ」
本気の三成の技を受けながら命をとりとめた事を
感心、羨望しながら大谷は鼻を鳴らす。
「では私が取り損ねた生命、
引導を渡してやるのも務めの内か。
秀吉様と半兵衛様の命令の残り火、
消してしまわねばお二人に合わせる顔がない…!」

「…大将の言葉で余計な人も竜の旦那に興味持っちゃったみたいだし?」
「うおぉ~!! 待たれよ石田殿っ!
徳川殿は兎も角政宗殿は我が宿敵!
渡しは致しませぬぞ!」
「貴様一体何を言っている?」
「難儀よな」

「うん大将。主旨が変わっちゃったよ?」
溜め息を吐き、呆れながら佐助は笑う。

信玄が倒れて以降これほど溌剌とした幸村を観るのは初めてで、
佐助は、政宗の事を嫌いと明言し態度に表しながらも
幸村のためにもやはりいなくてはならない相手なんだな、と痛感した。



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3の台本の政宗赤ルートでの政宗の
幸村と三成の同盟激怒っぷりに

幸村が三成と同盟組むことを決めた後に
佐助に「独眼竜の事とか気にしないで決断できたのは偉い」と言われて
初めて三成が政宗の仇だと気付いて幸村が慌てるとか(一つの事しか考えられない的に)
丁度三成が同盟組みに来てるから親切心で政宗に「帰れ」って言う佐助(サスダテ)

とか考えたけど着地地点が見えなかったんで
軽いノリに出来そうな幸村赤ルートでの真田西軍入り話。
真田→政宗。で、三成(興味)→政宗。みたいな。

つい参考にしてしまうSQ漫画だと伊達軍兵士の仇っぽくなってるけど
ゲームはそういやどっちかってーと政宗が自分の敗けの返上話だったそう言えば。

3の台本読んで漫画版はサナダテ一直線でむしろ良かったんだと思い直した次第。
そしてゲームでは関ヶ原のどのステージにも幸村いねぇし。
あのこ西軍でしたよね?

                                                 【20101201】