竜飛疾駆;後日談

 

政宗が奥州から日ノ本を統べ、
国内が安定して暫く。

佐助は、褥の中で政宗を後ろから抱き締めながら
耳の傍で囁いた。

「やっぱ、跡継ぎは必要だよね…」
「アン?
アンタのか?」
政宗はもぞり、と身体を反転させ
佐助と向き合い、表情を窺う。

佐助は「何でそーなんの」と苦笑する。

「俺に跡継ぎなんて必要ないって。
政宗のだよ」
「…あー、まー必要なのかもなあ。
気に入ったガキを養子に取ってもいーんだが」
「俺様としては
政宗の子供、見てみたいんだけど。
可愛いだろうなあ」

へらっと笑う佐助に、政宗は眉を潜める。

「面倒くせぇ言い方してねぇで
言いたいことはスパッと言え。」
「えー。素直な俺様は気色悪いんでしょ?」
「それとこれとは話が別だろ」

力の限り、ぎゅうっと鼻を摘まんでやると、
「わわわ言い゛ま゛す! 言いますって!」
直ぐに根をあげた。

佐助は、紅くなっているであろう、ひりひりと痛む鼻をさする。
「相変わらず力強いよね…見かけによらず」
「握り潰して欲しいのか?」
「ナニを?!
ってかナニをだったら政宗だって困るんじゃないの?」
「チッ」
「その舌打ちは俺様としては喜ぶべきところなのかなー…」
「で?」

促され、佐助は「あー、うん。」とこの期に及んで口ごもる。
が、意を決したらしく、一つ頷くと「その、ね」と頬を掻きながら話し始めた。

「…政宗の子作りを反対するつもりはないんだよね。
子供、可愛いだろうし、
俺様が政宗抱くのと政宗が女抱くのは
別の話だって理解してる…つもりだし」
「煮えきらねぇな」
「情が移らない保証なんてないからねー。
心配で心配で」

本音を言えば他の誰とも肌を重ねて欲しくない。
けれど政宗の立場を考えるとそうも言えない。

「で、だから、
政宗が仔作りする事になったら、
それ覗いてて良い?」
「…はぁ?!」

政宗は予想外な言葉に驚き、凶悪な表情になった。

「なんでそーなった?!」
「大丈夫大丈夫。俺様優秀な忍だし
相手には気付かれない自信は満々。」
「問題はそこじゃねぇ!」

何の冗談か、笑えない、
と思ったが、
佐助の表情は今まで観たことがないほどにいたく真面目なもので。

様々な葛藤に対し妥協した結果がそうなったのか、
と理解すると、
政宗は、はぁ、と溜め息を吐くしかない。

「…好きにしろ」
「好きにします。
…じゃあもっかい」

佐助は「調子に乗るな」とでも睨まれるかと思ったが。

「それは、拒否する理由はねぇな」

情事の後の色を遺した顔でにやりと嗤い返され
理性を失くした。


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 基本的に佐助の方が女々しいです。
政宗は開き直ると無駄に肝が据わります。でもたまにそれで後悔するハメに。

拍手に置いてたのは短期間。
                                    【20101205~20101207 ;拍手御礼用】