民間療法

 

過労がたたり熱を出して寝込んだ政宗を、
はるばる四国から訪れた元親が見舞った。
最初から見舞う予定で来た訳ではなかったのだが。

「せっかく遊びに来たのにそのザマとはなぁ」

枕元でヤンキー座りをし、至極残念そうに嘆息する元親を一瞥すると
「うるせー…枕元でんな声出してんじゃねぇ。
頭に響く」
政宗はごろんと寝返りをうち逆の方を向く。
額に乗せていた冷やした手拭いが落ちたが気にしない。
そもそももう温くなっていて、用を成さなくなっていた。

「おーおー言ってくれるねぇ」
「このザマだからな。
アンタの相手はしてやれねー。帰れ」
「まあ待ちな。
よく効く治療を施してやっからよ。
早く元気になって俺の相手をしてくれよ」

「ah?
魚を額に乗っけるとかってのなら御免だぜ」
以前元就がそんな事をされたと聴いていた。

「違う違う。今回はこれでぃ」
振り返った政宗に
元親がにやり、と笑いながら誇らしげに取り出して見せた物は。

「…葱?」
「右目の兄さんに貰ってきた。
良い葱だな。よぉっく効きそうだぜ」
「首に巻く、ってやつか」
そんな民間療法があると、耳にした事はあったが実践した事はない。
だが。

「いんや?」
元親は否定すると、
ばっと政宗の掛け布団を剥いだ。

「?! 何しやがる!」
「大人しくしてな。きっちり治してやるって。」
「って言いながら脱がせる意味がわかんねぇ!」
「直ぐにわかるさ」

着物をはだけさせ、下穿きを乱暴に取り払う。
同時に葱を咥え
ぱき、と根の部分を折ってそのまま薄い皮を一枚剥ぐと、
あらわになった政宗の下半身に指を這わせた。

熱で朱く火照っていた政宗の顔は
一気に血の気がひいて蒼白になる。

「っ! まさか…」
「慣らさねぇと挿入んねぇかな」
「ば…」
「ん? 熱でほぐれてるか。なら直ぐイケるかもな」

政宗が身体がだるく抵抗出来ないのを良いことに、
膝を持ち上げぐっと中に押し込む。

「っひ…っ」
「奥まで入れる方が良いんだっけな?」
「うあっ」
「つかこのままじゃ長いよなぁ。
暫く入れたままにしねーとなんねーんならよ」
「…な…?」
「っとこのぐらいで折っとくか。」
「っ!」
「もっかい中に入れて…
…あ」
「……?」
「全部入れちまった」
「…っ?!
な、てめぇ、それ」
「悪ぃ。
出すのは後で自力で何とかしてくれや。」
「てめ…っはうっ?!」

「暴れると余計中に入ってくんじゃねー?」
「誰のせいだ…! っshit! …はん…っ」
「うお。こりゃ目の毒だな」

醸し出される政宗の色香に惑わされそうになり、
元親は慌てて着物と布団を元通りにしようとしたが。

折り悪しく、襖がすっと開かれた。

「政宗様。
見舞いの者が他にも…
…っ?!」
「政宗殿。失礼いたす。お加減は如何か。
長曾我部殿もお出でに…?
っぐはっ」
「っ! こじゅ…っさ、真田?!
っん…っ」

政宗は慌てて布団を引き寄せ身体を隠すが
動くことにより中のモノに刺激を与えられふるりと身を震わせる。

「政宗殿…っなんともは、破廉恥でござる…!」
「旦那! しっかり!
鼻血なんか出してないでしっかり観ときなって
滅多にお目にかかれないんだから!」

いつの間にか現れた佐助が
鼻から止めどなく血を流している主を介抱した。

言っている内容も内容だが、
「忍! アンタ一体どっから出てきた?!」
普段なら驚きはしない。
だが状況が状況である。
政宗は顔を青褪めさせ、冷や汗をかいた。
「え?」
佐助は首を傾げると、しれっと上を指差す。

「天井から。」

「…じゃあまさか…」
「視てたよ~一部始終。」
「…っ!」
政宗は、今度は顔をかあっ真っ赤にする。

その様子を観、小十郎はゆらりと身体から怒気を立ち上らせた。

「西海の鬼…貴様政宗様に何を…?」
さすがの元親も、その迫力に気圧されて座ったまま後退る。

「落ち着けって右目の兄さん!
俺はただ独眼竜に早く治って欲しくてだな!」
「右目の旦那から貰ったぶっとい葱を竜の旦那の尻の孔に突っ込んだよねー」

元親が何とか穏便に事を済まそうと言い方を考えている隙に
佐助が軽い口調で余計な補足をした。

「…ほお?
この俺が、丹精込めて育てた野菜を、
よりにもよって大切な政宗様に、
そんな使い方をするたぁなあ!」

語気が荒くなっていくにつれ、
噴き出すオーラも苛烈になっていく。

「ま、待て待て!
民間療法! 民間療法なんだって!」
「問答無用!」
じゃきん、と刀を抜いた小十郎に、
興奮してまた熱が上がってきた政宗は
気だるげに
「小十郎。暴れんなら外行け外」
と命じた。
止める気はない。

「はっ。早早に始末して参りますので暫しお待ちを!」

喧噪が遠ざかっていき、政宗はやれやれと肩を竦める。
寝直そうと布団に潜り込もうとすると
「愚か者め」
これまたいつの間にか
元就が布団の脇にちょこんと座っていた。

「…アンタまで来てたのかよ」
最早つっこむ気力は無いが
口を開かずにはいられない。
この男も、多分、観ていたのだろう。
おそらく最初から。

「その中のモノ、出す手伝いは必要か?」
「アンタに頼むのは何か気が引ける」
「では某が!」
「んじゃ俺様が」
「アンタらもまだいたのかよ…」
「心配で!」
「気になって」
三人の視線が下半身に注がれているのは気のせいだと思いたい。

「いーから帰れ」

周囲で騒ぐ連中と自分の中のモノをあえて無視して眠りに就き、
再び目醒めた時には平熱に落ち着いていた。

だからと言って
元親に感謝する気にはまるでならなかったが。
 



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…実はみにばさネタだったり(だいなし)
毛利さんの頭に魚、あたりでお気づきの方もいらっしゃったかもですが。

ので伊達君も鎧のまま寝てたんじゃね?

元親の扱い、何故こうなるんだろう?
いや、親切からの行動→あれ? 政宗可愛くね? がテーマですが。

有り勝ちネタだろうけど多分小十郎がヤってる場合が多そうだしいいよね。

                       【20101207~20101215;拍手御礼用】