奥州七夕祭

 

※あにばさと2010仙台七夕のコラボ商品の筆頭の話です。※
※どういう絵柄かはアニメ公式HPとかに残ってると思うよ。筆頭テライケメン。※

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自らを第六天魔王と称する織田信長は、
戦国の世にあって大きな脅威であった。

しかし彼に日ノ本を支配させてはならんと
決起した武将達が力を合わせてそれを打ち倒し
束の間、休息とも言える平穏が訪れた。

戦に参加した武将達はおのおの密かに天下統一を狙ってはいたが
どの軍も織田の猛攻に無傷とはいかず
傷を癒してからでなくては動けない。

類に漏れず
戦いで負った傷を労りながら
奥州筆頭伊達政宗は
城に籠り溜まっていた執務をこなしていた。
何より最終決戦より前に穿たれた銃創が後を引いている。

傍らには、右目と称される片倉小十郎が容態を気遣いながらも
てきぱきと片付けるべき案件を読み上げていく。

「次が最後になります」
「HA、やっとかよ」

織田討伐の間ほったらかしにしていた大量の案件を
一気に処理させされていた政宗は
自分の肩を軽く揉み安堵の息を溢す。

机仕事が嫌いな訳ではない。
だがこれだけのまとまった量を休みなく、とあっては
戦とはまた別の疲労を覚える。
高揚感が得られない分、余計に。

小十郎は正座していた足を動かし
心持ち居住まいを正した。

「実は、政宗様御本人に依頼がありまして」
「俺に?
…依頼ってのは何だ」
「はい。飛脚組合奥州支部からなのですが、
配送物を入れる入れ物を販売もしていて
政宗様の肖像を是非に使用したいと」
「what?
肖像ってのは、つまり俺をモデルに絵を描くっつー事か」
「いえ。それが、
そのままのお姿を紙に写す技術があるようで」
「hum…?
じゃ、真実俺の姿が世間に知れ渡るわけか。
で、てめーはやらせてーんだな? 小十郎」
「…何故、そのように」
平静を装い、小十郎は尋ねる。

政宗は、その返しこそが肯定そのものだな、と頷きながら
「敵方の雑兵にまで顔が知れちまったら危険が増すのは必定。
影武者も立てにくくなるしな。
お前の判断で握り潰してもおかしくねぇってぇのに、
俺の耳に入れたって事ぁ、反対しているどころか
引き受けさせてーと思っている…
違うか?」
と、結論に至った経緯を懇切丁寧に話して聞かせた。

「…は。
そこまでお見通しとは…恐れ入ります。」

身体を固くし畏まる小十郎に、
政宗は苦笑に似た、不敵な笑みを見せる。
「別に責めてる訳じゃねぇさ。
ただ理由は聴かせろ」
「は…」

一言、諾の意で応えたきり沈黙した小十郎に
政宗は急かす言葉を投げようと口を開きかけると
その気配を察したように
「恥ずかしながら」
と前置きを告げる。

「…民が政宗様を慕っているからこその申し出かと思うと嬉しく思い
無下にしづらく感じまして。
…しかし政宗様の仰る通りでございます。
御身、危険にさらさせるわけにはまいりませぬ。
浅はかでございましたな」

小十郎としては政宗の真の肖像―写真という技術らしいが―が写された物が出来たなら
使わず飾りたい気持ちがある。
そして写真の使用目的が飛脚便用ならば
各地に配達される事もあるだろう。
奥州以外にも政宗の人気と魅力が広く知れ渡る。

つまりは自慢したかったのだ。単純に。

「で、いつだ?」
「は?」
「そいつは俺がいないと作れねぇんだろ?
顔が知られたところで困ることはねぇ。
大方の大将さん達とは顔見知りだしな。
その大役、この奥州筆頭が引き受ける」
とん、と胸を親指で指しニッと笑う。

小十郎は恐縮して深く頭を垂れた。

「はっ。
七夕飾りの前で、という提案が御座いました。
祭りに合わせて販売しようという心積もりのようで」
「っておい。
なら早くしねーとマズいじゃねーか」
「左様でございますな」
「とっとと連絡しな。
時期外れなんてcoolじゃねぇだろ」
「はっ。では早速」

そして、なんやかんやあって仕上がった物が無事手元に届けられた。

「fum…なかなか良い出来じゃねぇか」
「はい。
政宗様もとても良い表情をしていらっしゃる」
「HA! 当然だ。やるからにはパーフェクトじゃねぇとな!」

「ではこれを使い各地に中元でも送りますか」
珍しく浮かれた声音でそんな事を宣う小十郎に
得意顔だった政宗は途端に渋面を作る。

「却下だ」
「何故です?!」
語尾の「だ」にかぶさるように身を乗り出して問い詰めてくる小十郎に
政宗は身を引く。精神的にも若干引いた。

「お前が何でだよ!
今までんなもん贈ったことねーだろーがあからさますぎて恥ずかしいわ!」
「政宗様が恥ずかしがる必要は御座いません!
この小十郎名義で送りますゆえ」

今まで贈った事がない、の部分を否定しないということは
やはりこの袋があるからこそか。
政宗は頬を引き攣らせる。
「大体、各地に、って
テメェ、そんなに贈る相手がいるのか?」
「勿論です!」
その「勿論」の相手に今まで贈っていなかったのか。
政宗は小さく嘆息する。

「で、誰にだよ」
「とりあえず軍神や甲斐の虎には必要でしょうな。
その二人を含め、織田討伐で手を貸して戴いた相手には贈りませんと」

政宗は顔を手で覆った。
その二人だけでも相当だが、
安土城の戦いに参加した面子を考えると目眩がする。
人数も結構なものだ。

「それは止めろ。絶対笑われる…」
「問題ございませぬと申しました。
笑われるならばこの小十郎がでござります!」
「自覚あったのかよ。
兎に角てめーはそれ使うの禁止だ」
「…仕方ございません。
確かに外装ですから破れたり汚れたりしては一大事」
「ham? 中身を守るためのもんなら当たり前だろ。
俺はそれを承知の上だったぜ?」
「なんと!
そのお心の広さ、
この小十郎まこと感服いたしました!」
「…やっぱ馬鹿にしてねーか?
つかどこぞの赤いのみたいになってんぞ」
「はっ。
甲斐に贈ればその赤いのの眼にも触れることに…?
…止めて正解ですな」
「? 良くわかんねぇが…思い止まってくれたようでなによりだ。」


その情報を、「赤いの」こと幸村に仕える忍の佐助は
しっかり掴んでいた。

「右目の旦那も詰めが甘いねぇ。
俺様の耳に入らないとでも?
どれどれ。
…ふぅん、竜の旦那、こんな笑い方も出来るんだ。
いつもこうなら可愛いのに。 ………。 取り敢えず、鑑賞用と保存用、あと旦那と大将へのお土産用も必要かな」 普通に購入して甲斐に戻り、早速主の幸村に進呈する。 幸村はその袋に写された政宗の姿に目を見開いた。 「ま、政宗殿っ?! こ、これは一体……!」
「なかなか良い出来だよね~。
なんなら真田の旦那や大将もこういうの作ってみる? なんちゃって」
「………は……」
「…旦那?」
「破廉恥でござる…!」
「何で?! これのどこが?!」 戦場と同じ格好で七夕飾りの前で嗤ってるだけですよ?! と佐助はツッコむ。 己の主で長い付き合いながら、幸村の言動はとにかく突拍子も無い。 「こんな、可憐で愛らしい笑みを万人に晒していることこそがだ!」
キッパリと言い切る姿はむしろかっこいい気もするが。 「……旦那……。」
そこまで末期だったとはさすがの猿飛佐助も気付けませんで。 「くっ…このような笑みを向けられてみたいものよ…
誰に向けてのこの表情なのだ…!」
「そりゃ、決まってるんじゃない?」
「やはり…片倉殿、でござるか?」
「違う違う。
竜の旦那が大事にしてるもんに向けて、だとしたら答は一つっしょ」

「…奥州の民に向けて、
なのだな」
幸村はほんわりと微笑み、 「そういうこと」 佐助も擽ったそうに笑った。

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仙台七夕のコラボ商品の筆頭がテライケメンだったので書いたもの。

つまり別館出来る前に妄想したのですね。

書きかけだったのを年を越すわけには行かないと無理矢理纏めました。
幸村→政宗はデフォですが佐助→政宗もデフォっぽくなってきた。
小十郎さんのは多分らぶではない。

 

 

      

多分弐期の前。

 

 

 

                             【20101229】