越えたい昨日 / 家康→|←政宗

 


「いえや、す…?」
「ああ!
久しいな! 独眼竜」

政宗は目の前でにこやかに笑う青年の姿を、
上から下へと何度も視線を往復させて確かめる。

「それほど見つめられてはくすぐったいぞ」
笑いながら告げられた言葉に、 政宗はくっと左目を細めた。

「その声…確かに、アンタは家康、みてぇだな」
「なんだ。信じてなかったのか?」
「信じてねぇっつーか信じたくねぇっつーか…
…そうか、アンタが家康か…」
「お、おい独眼竜?」

意気消沈。
そんな言葉が相応しい政宗の様子に、
家康は慌てて政宗の側近に顔を向けた。

「片倉殿。
ワシは知らぬうちに何かしでかしちまったのか?」
「てめぇは悪くねぇ。気にすんな」
小十郎は政宗を観たまますげなく応えた。
家康は眉を下げる。

「そう言われても気にはなる」
「…sorry」
「独眼竜?」
しおらしい態度で素直に謝ってくる政宗に家康は驚いた。

「謝らずとも良い。
ただ、訳を聴かせてはくれないか」
その言葉は政宗の耳には届いていないようだ。
「そうだよな…何年も経ってるんだ。
育つよなぁ…
けど」
そう、ぶつぶつと、独りで呟いている。

「ここまで可愛くなくなっちまうとはな」

「……………っ?!」
意味を理解するまで時間がかかったが、
その言葉にはかなりの衝撃を受けた。

「もうあの小さいくそ生意気な家康はいねぇんだな…」
切なげに呟く、憂いの表情はまるで。

「どどどどど独眼竜っ?」
「…政宗様は、小さい頃のてめぇをいたく気に入っておられたんだ。
豊臣の下についたと聴いて酷く気にしておられた。
だが、育ったテメェに興味をなくしたようだな」
「なっ?」
小十郎の言葉は追い討ちであった。

「独眼竜…」

家康は落ち込み、だが、直ぐに気を取り直しキッと顔を上げた。

「独眼竜!」
「ah?」
「気を落とさせてしまって悪い。
だが、そこは割り切って付き合ってはくれんか?
もしかしたら昔のワシより好きになるかも知れんぞ?」
「…家康…」

政宗は目を見開いた。
自信家とも取れる言葉。
だが。
「…昔のアンタなら、その言葉不安なく言えたんだろうにな」
ふっと笑う。

「面目無い」
「だが悪くねぇ。
付き合ってやる。
昔のアンタ以上に惚れさせて見せろよ?」


「……傍で聴いていると告白話のようだが、
同盟の話だった、よな?」
「…………?」


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

2は関ヶ原でお金稼ぎをするのが好きなんです。
そうなるともれなく小生意気な家康君がいるんです。

結構好きだったんだよねあの無駄な自信家な感じ。
3の家康は落ち着いちゃって物足りない。時がある。

…2の真田ストーリー最終ステージに至るまでの筆頭と家康の同盟話とか読みたいなあ。

                                    【20110111】