相乗同乗 / チカダテ

 


鶴姫との船勝負の途中、奥州に寄った元親は
伊達軍大将である政宗と顔を合わせていた。

歓迎するように嬉しそうに笑う政宗に、
元親も気が大きくなる。

「俺の船に乗る気はねえか?」

笑顔でそう誘ってしまう程。

「心は動くが、遠慮しとくぜ」
「なんでぇ。えらくこなれた断り方だな。
誘われ慣れてんのかい?」
「俺としちゃあ乗っかりてぇお誘いなんだがな」

そっと政宗が向けた視線の先には
鬼のような形相の小十郎が元親を睨み付けていた。

「政宗様!
其奴が以前似たような甘言で誘い
そのまま御身を拐かしやがった事をお忘れか!」
「俺は楽しかったぜ?」
「こうやってきっちり返したんだからいーじゃねーか」
なあ? と顔を見合わせる通称東西兄貴コンビに
小十郎は額にびきりと青筋を刻む。

「まーさーむーねーさーまー?」
もっと御自身のお立場を! やら
軽々しく誘いに乗るなど言語道断です! やらと
小言が始まってしまうと
耳を塞ぐだけではやり過ごせず
「…スミマセン」
謝るしかない。

「そんな訳で西海の鬼。
今回は一緒にゃ行けねぇ。悪いな」
「随分と嫌われちまったみてぇだな」

最初の一手を間違えたか、と元親は頭を掻く。
懐柔すべきお目付け役を敵に回したのは明らかな失策であった。

「急いでるんだろ?
早く行きな。
姫さんに負けちまうぜ?」
「おっとそうだった。
行くぜぇ野郎共!」
「出航の準備は万端ですぜ兄貴ぃ!」
政宗に急かされ、
元親は手下を率い船へと戻ろうと身を翻した。

「小十郎!
ちょいと先まで見送るぐらいは良いだろ?」
政宗の言葉に
「…仕方ありませんな」
小十郎は渋渋頷く。

当然のように同行してきた小十郎の目を盗み、
政宗は元親に身を寄せた。
そして、
「独眼竜?」
驚く元親の耳許に
「今度はなんかのついでじゃない時に遊びに来な。
そん時は俺も無理矢理にでも小十郎を説き伏せて
あんたの船に乗るさ」
と囁く。

「へ?」
ぽかんと瞳と口を開ける元親に
「you see?」
艶やかな笑みを見せる。

「独眼竜」
「今アンタの船に乗っちまったら
大事な勝負の邪魔になんだろ?」
「…そういや、そうだな」

お互い、片手間に相手を出来る存在じゃないと知っていた。

「なら、勝負が終わったあとにまた来る。
戦勝の宴、一緒に開こうぜ」
政宗は大人げねぇな、と心の中で苦笑する。
そういうところがこの男の持ち味でもあるのだが。
なにせあの凶王・石田三成を友と言って憚らない男だ。

「OK、
敗けたら慰めてやるから勝ち負けに関わらずちゃんと来いよ」
「ああ」

元親は右手を小指を立てて差し出す。
「約束するぜ」
「約束だな」
政宗は自分の右手の小指をそれに絡めた。

きっちり港で見送られて船に乗り込んだ後、
元親は、
政宗の「慰め」の方法がどんなものなのかに気を取られて船の進行が遅れ
鶴姫に敗けてしまう事になる。

 

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チカダテサーチに登録したいなぁ、と思い自分のサイトを振り返ってみたら
マトモなチカダテが一個も無かった件。えろとかシモとかちょっと自分。
登録申請はまだまだ先のようです。

3;鶴姫青ルート。
伊達ちゃんはこっそり鶴姫の方を応援しています。弱者の味方的に。


                                                【20110114】