劫火絢爛 / 幸村→政宗

※現代篇ですが戦国のほうでうっすら死にネタがあります。※ 

珍しく二人きりになったので、
慶次は気になっていた事を尋ねる事にした。

「幸村は今生でも言わないつもりかい?」
「…慶次殿。
貴殿は余程馬に蹴られるのがお好きと見える」
「余計なことだってのはわかってんだけどさー。」
幸村にしては珍しいキツめの言葉に、慶次は苦笑する。
けれど、何を、と言わない内に返事をしたと言う事は、
「好きなんだろ?
あの政宗も」
「……」
幸村は黙した。

こんなようなおとなしい反応は、
破廉恥破廉恥と色恋沙汰から逃げていた真田幸村とは別人のようである。
この人生の他に、一生分の記憶があるのだから当然と言えるが。

だが頬は薄く桃色に染まっていた。
幸村は誤魔化しきれないかと観念する。

「仕方あるまい。
可愛らしい御方だからな」
「やっぱり」
「しかし恋仲になりたいなどとは思ってはおらぬ。
今と、そしてこの先も、倖せでいてくれるならばそれで良い
あの毛利殿と違い、
今の元就殿ならば大丈夫であろう」
「…まあ、俺も別に元就の不幸は望んじゃいないしね」

そこが難しいところである。
政宗は独りしかいない。
戦国や政宗が治めた世では、
殿様が大っぴらに何人を相手にしようが良かったのだが。
寧ろそれが甲斐性の現れでもあった。
尤も、それはあくまで確実に世嗣ぎを遺すためという理由があったのだが。
そして後継者の選択肢を拡げるための。

幸村はふっと微笑んだ。
「それに実は、
前の政宗殿には告白いたした」
「え、嘘、いつ?!」
「今わの際に」
驚く慶次に、
子供が自分のしでかした悪戯を自慢するような表情で応えた。


「政宗殿。
最期に言わせて下さい。
ずっと、
お慕い申しておりました」
「……。
なんだ」
「……?」
「墓場まで持ってくつもりなのかと思ってたぜ」
「…やはり、気付かれておりましたか。
そうしようかとも思いましたが
このような状況でならば、
佐助も赦してくれましょう」
「Ah? 告白ぐらいはこんな時じゃなくたって…
アイツもそこまで心が狭くはねぇだろ」
「ですが、あやつは政宗殿と公認の仲になってからと言うもの
嫉妬心を包み隠さなくなりましたからなぁ」
「まあ溜め込まれるよりはマシだな。
…あんがとな。
アンタの事をそういう風には想えねぇけど、
誰より大事に想ってたのは本当だ」
「政宗殿」
「この世界で、誰にも替えられねぇ、
アンタは俺の唯一の相手だ」
「勿体無き御言葉…!」
「アンタに逢えなかったらこんなに愉しくはなかった」
「それは某とて同じこと!
出逢えて嬉しゅうござった…!」

「真田…幸村」
「はい」

「goodluck」



頬に触れた唇の感触と
最期に観た表情は
今でも焼き付いている。

それだけで良い。
想い出だけでも。
優しい人を思い悩ませ、
気まずくなるよりは。


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幸村→政宗はデフォルトだってばよ。

何歳ぐらいでとかどっちがいまわのきわなのかとかは
御想像にお任せします。
  

                            【20100201~20110211;拍手御礼用】