本末転倒⇔本願成就 / 武蔵×政宗

 

 

「政宗のおヘソ、デ〜ベソ〜!」
「テメェ…その口を閉じな」

片倉小十郎が宮本武蔵の挑発に怒り心頭に達し
一触即発の様相を呈したまさにその時、
「随分と威勢の良いガキだな。
誰がデベソだ」
なんと、今この場所に本人が姿を現した。

「ガキじゃねぇ!おれさま最強! 宮本武蔵!
…ってオメー誰だ?」
「ah? おいおい。
テメェがさっきっから俺の名前を連呼してたんだろうが」
「へ?
じゃあおめーが政宗なのか?」
「そうだ。」

「…………。」
自分をを見詰めたまま黙り込んだ宮本武蔵に首を傾げながら
伊達政宗は極殺状態の片倉小十郎に顔を向けた。

「何安い挑発に乗ってかってやがんだ小十郎」
「は…申し訳ございません政宗様。
しかし政宗様をあのように貶されては
この小十郎は黙ってなどいられませぬ…!」
「んな風に怒っちまったら
まるで俺が本当にデベソみてぇじゃねぇか」
伊達政宗がそう口にした途端、
固まっていた宮本武蔵が矢庭に動いた。

「?!
テメェ、何しやがる!」
「本当にデベソじゃねぇのか確かめさせろ!」
「っばか、引っ付くな!」
「おめー本当に強いのか〜?
随分細っこいぞ」
「テメェだって言う程立派な身体でもねぇだろうが!」
「おれさま育ち盛りだもんね〜」
「テメェ、政宗様から離れろ!」
「嫌だね〜
おれさまコイツのヘソを確認するまで離れねぇ!」

何やら状況が混迷を極めてきたが、
宮本武蔵は伊達政宗を脱がそうと躍起になり、
伊達政宗はその魔手からなんとか身を守り、
片倉小十郎は伊達政宗を助け宮本武蔵を排除したがっているが
二人が密着していて迂闊に手を出せない状態なのであった。

というか武蔵さんは片倉小十郎と戦いたかったはずなのだから
絶好の機会であるはず、なのであるが。

「政宗顔真っ赤〜!
かーわいー」
「what?!
ガキが何言ってやがる!」
「ガキじゃねーってば。
おれさま武蔵!」
「わーった! わかったから離れろ武蔵!」
「………!」

ずっと力で敗けていなかった宮本武蔵だったが、
急に身体から力が抜けたように
政宗の抵抗を受けふらふらした足取りで離れた。

「…武蔵?
テメェも随分と顔が朱く…」
「だ、伊達政宗…っ」
「!
いけません政宗様、
その者の言葉に耳を傾けては…!」
「ham?
何言ってんだ小十郎」

「おめー、、おれさまの嫁になれ!」

「………はぁ?」
真っ赤な顔のままびしりと人差し指を突きつけてきた宮本武蔵に
伊達政宗はぽかんと口を開いた。
さもありなん。

「くっ、図々しいガキだ!
政宗様をテメェなんかの嫁になどくれてやるものか!」
「ふーんだ、おめーになんか訊いてないもんねー」
「よ…嫁…だって?」
「そうだ!
夫婦なら裸を見せ合うのだって普通だしな!
一石二鳥!」

まさか宮本武蔵氏が四字熟語を知っていたとは驚きを隠せないが
それよりも
「どう一石二鳥だってんだ?」
政宗氏の疑問は尤もであった。

「デベソかどうか確かめられるし、
おめーとずっと一緒に居られる!
ほーら一石二鳥!」
「……っ!」

あまりにも直球な武蔵氏の求婚に
政宗氏はどうやら心を射抜かれてしまったようである。

「おいテメェ!
勝手な事を言うんじゃねぇ!」

しかしまさしくそのような反応のように見受けられるのであった。

「違う!
政宗様には免疫がねぇだけだ!」

「なー。おれさまの嫁になれよー」
「……。最強だってんなら俺に勝って見せな。
話はそれからだ」
「よぉーっし! まかせとけ!
おれさまのかっこいいとこしっかり見ろよ!」
「HA! 面白れぇ!」
「政宗様っ?!」

そんなこんなで強いやつと戦いたい、という宮本武蔵氏の最初の目的は
無事達成出来たのであった。

めでたしめでたし。

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約一名めでたくありませんが。

あにばさ弐六巻のばらえてぃぱーりぃCDネタ。
地の分がナレーションなのである意味会話のみ。

正解は「でべそじゃない」と小十郎あたりが言うネタなのだろうが
武蔵と政宗を絡ませられる良い機会だったので。

                          【20110305】