鏡の鑑 / 元就×政宗

 

 

毛利元就は
自分の領地の戦場に設置した大鏡を見上げ、眺めていた。

「我とした事がこれの存在を失念していたとは…」

後ろに控えていた元就の部下達はその背中を見て
ひさひそと言葉を交わす。

「元就様、
先程からずっと照日の大鏡を見つめてますけど
一体どうしたんでしょうね?」
「かれこれ小一時間は眺めてらっしゃるな…
何か策を練られているのだろうが…」
「貴様ら」
「「はいっ?!」」

くるりと振り返り低く呼び掛けられ
部下はしゃきんと背筋を伸ばし冷や汗を流す。
小声でしていた会話だったが、
元就ならば聴き取っていたとて不思議はない。
はっきり言って元就に怒られるのは相当怖い。
無表情で淡々と辛辣な言葉を投げ掛けられるのだ。

だが、元就から出た言葉は叱責ではなかった。

「あの照日の大鏡は試作品があった筈だな」
「は? 
は、はいっ。
大きさ違いが幾つか。
まだ廃棄せずにいましたが…
使い道を思い付かれたのですか?」
「うむ。
人間の全身が写る程度の大きさの物を一つ、
我の部屋に運び込むが良い」
「元就様のお部屋に…?
一体何をなさるおつもりで」
疑問に思い、つい口にしてしまうが
「駒ごときが我に問うか。
時間の無駄よ」

冷たい眸で睨まれて部下達は竦み上がる。

「もっ、申し訳ありません! 直ぐに運びますっ!」
「わかればよい」

数刻後、
元就は自室に戻ると
鏡を運び入れていた部下を指揮し
設置場所を細かく指示して
思い通りの場所に置かれた鏡を見て満足げに頷いた。


「で、俺はなんで呼ばれたんだ?」
「貴様の為に用意したからに決まっておろうが」

毛利の船が元就からの文を携え奥州を訪れた。
そこには政宗を安芸に招きたいと書かれていたので
政宗は側近の小十郎を説き伏せ
そのままその船に乗って単身元就の元に馳せ参じた。

と、言うのも二人が紆余曲折を経て
所謂恋仲になったからであるのだが。

いつもの戦装束を身に纏ったままの政宗は
同じく武装したままの元就をじっと見つめた。

「…アンタの部屋で一戦おっぱじめろってか」
「貴様は馬鹿か」
一刀両断。
元就は政宗の言葉をきつい言葉ですぱりと否定した。

「この部屋の鏡には日輪の光は当たらぬ。
罠が作動せぬわ。」
「わかってる。JOKEだ」
政宗は肩を竦めた。

こういう所も嫌いではないが、
頭ごなしに否定されては立つ瀬がない。

しかしだとすると、
この鏡の存在は余計不穏で、嫌な予感しかしなかった。

「…否。ある意味間違ってはおらぬか」
「what?」
一転、心持ち柔らかい声で呟かれた言葉に政宗は眉を潜める。

「では早速一戦交えるとするか」
「…っつって何で俺を脱がそうとしてんだ?!」
「愚問よ。
既にこの部屋に敷かれている布団で何がどうなるか察しておろう」

そういう行為は今まで何度かしてきた。
だが。

「…戸、開け放してねぇか?」
「案ずるな。人払いはしてある。
貴様の嬌態を他の者に見せるのは勿体無かろう」
「……まだ陽が高いんだが」
「明るくなくては鏡に映らぬであろうが」
「…っやっぱりその為なのか…!」

朱かった顔を蒼くし
自分の手から逃れようとする政宗の動きを
「甘いわ」
「っ!」
元就は一撫でで封じた。

「…元就…っ」
弱い場所に触れられ甘い息を溢す政宗の身体を
「貴様の身体の事は我が手の内よ」
元就は容赦なく暴いていく。

「なら鏡なんて必要ねぇだろーがっ!」
「貴様も自身の事を知るべきぞ」
「必要ねぇ!」
「必要だから申しておる」

慣れた手つきで政宗を丸裸に剥き
自らも身に付けていたものを全て脱ぎ捨てる。

「貴様が普段どれだけ無駄に色気を振り撒いているか思い知り
猛省するが良い」
「俺に色気を感じる方がどーかしてるんだと思うが…
…アンタがそう思ってくれてんのは悦ぶべきなのかもな」

元就に抱えられ鏡に移された自分の姿を直視出来ずに視線を逸らす。

鏡の中の元就と目が合った。
その眸は愉しげであった。

「ついでに普段視られぬ場所も見せてみよ」
「そっちが本音に聴こえるんだが?!」


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うん。ごめん。
あ。3ネタです。

鏡の試作品ぐらいありそうだなと。
正しい? 使用法をしてもらおうかと。多分真円じゃない形のやつ。

ナリダテだとなぜこういう傾向になるのか。 

                              【20110330;初出/20110404;加筆修正】