風の翻弄  / 風政

 

風魔ルート後の出来上がってる二人。    

身体を重ねるのは嫌いじゃない。

普段無口で無表情な相手を身体中で感じることが出来るからだ。

速くなる鼓動や、乱れる吐息。高まる体温。
抑えきれないのか、早急な動きと、自分の中に穿たれる、固く、熱いモノ。

身体と、心に、相手の存在を深く刻むことの出来る至福の時間だとも思う。

けど、モノには限度ってのがあった。

「小太郎。話がある。そこに直れ」

そう言うと小太郎はその場にちょこんと正座をする。
躾けたわけでもないのに、何故かいつもこんな反応をする。
直立不動でも良いんだがな。
まあ真っ裸で目の前に立たれても困るが。
事後の後の気だるい身体をなんとか起こして
自分も正面に座る。
喉も疲れているが、今、この場で言っておかなくてはならない。
直して欲しいことは、直後に叱った方が良いのだと
何処かで耳にしたことがある。

座っているのも辛いがキッと睨み付ける。
俺がこんな状態になった理由は根本から断たねぇと。

「テメェ、どっかから手に入れた知識を
逐一俺の身体で確かめてねぇか?」

「…………!」
小太郎はぴきり、と固まった。ってことは。

「やっぱりか…」

最初は、普通で、優しかった。
丁寧、と言うか。

なのに。
俺が奥州に戻らず小太郎の傍に居ることを決意してから暫くして。

肌を合わせる行為の内容が変わった。
愛情を持って接してくれてるのはわかる。わかるが。
俺の反応に興奮するのが伝わってきて嬉しい。嬉しいんだがっ!

「明らかにescalateしてるだろう!
ど、道具を持ち出してくるとか!」

さすがに変なモノをナカに挿れられたりはしないが
羽根のようなモンで敏感な部分を擽られたり、
紐で縛って止められたりだとか。
それだけでも大分キツい。

「その内クスリとか使い出しやしねーかと気が気じゃねぇぜ…」

俺の言葉に小太郎はぶんぶんと首を横に振る。
そんなことしない、の意味だろう。
よく解らねぇがpolicyがあるらしい。
それにしても。

「…mannerismに思ってるのか?
普通にヤるんじゃ満足できねーのかよ?」

気持ち好くさせたい。
その一心からの行動かと最初は思った。
その内、もしかして単に忍の修行で身に付けた知識を確かめたくなったのかと思い至った。
なにせ、手付きがまるで覚束ない。
…それでも充分、ではあるが。

けれど。
もし、俺を抱くのに飽いたから手を変え品を変え、ているのだとしたら。

不安にかられ口に出した事が
本当にそうなのではないかと思え恐くなって来て
残った左目の視界が滲んできた。

「そこまでしねぇと抱くのが厭な位、」
「………?!」
「っ要らなくなったんなら、言ってくれりゃあ…っ」

情けない、と思うが流れ落ちる泪を止められなかった。

小太郎に捨てられるのは哀しい。
だが、無理に近くに居てくれても苦しいだけだ。

他人に執着するのはこれが初めてだった。
小十郎が先に死んだとして、それでも前を視て生きていく覚悟があった。
真田幸村は、この手で倒すつもりでいたのだから生命を奪う事も承知の上。
自分の傍からいなくなっても、これ程胸が締め付けられはしないだろう。

事実、自ら手放した。
小太郎と共に生きるために。

だから。
そうまでして欲した相手だったから、
心が離れたと思うと呼吸すら儘ならなくなるし
無理に一緒にいられても痛みしかない。

「〜っ」

こんな風に泣いても困らせるだけだとわかっている。
別れたくないと縋るなど見苦しい。

小太郎の方は観られない。
顔を上げることすら出来ず、室内を見回すと、
床の横に置かれた小太郎の刀が目に入った。
小太郎の荷物になるぐらいなら。

「………っ!!」

それに手を伸ばすより早く、抱き締められた。

「っ小太郎…?」
「…………」

左頬を舌で舐められる。
涙を掬うように。
「っ!」
目許に唇が触れ、思わず顎を引き瞳を瞑ると、
唇を塞がれ後頭部を大きな掌が優しく撫でた。

「小太郎…?」

少し身を離してそっとその顔を窺う。
小太郎は、切羽詰まった表情をしていた。

「…………っ」

反省してるような、赦しを乞うような様子に、
懸念が杞憂であったようだとホッとする。

「…怒ってるわけじゃねぇ、よ。
確かにアンタの手腕は確かで、
普通にヤるより気持ちはイイさ。
けどよ」

感覚を思い出し顔が朱くなる。
けどあの行為じゃ。

「わけ、わかんなくなる。
もっとアンタを感じたいのに、
誰とヤってんのかわかんなくなるぐらいtripしちまうんだ」
「…………!!」
「だから…
っ? ちょ、ま、小太郎! whait!」

掠れた声で止めるが止まってくれなかった。
だがまあ、その後の行為で、
わかってくれたみたいだと安心する。

…趣向を変えるのも、たまに、なら良いんだけどな。


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小太郎さんは研究熱心てことで。

戦乱が治まってないので
二人共たまにこっそり傭兵として戦に参加して小銭を稼いでるんじゃないかな。
お揃いの兜で。(小太郎の兜は目元が隠れて丁度いいってんで)(六爪な時点でバレバレですが)


                                                     【20110116】