変化の兆

傍らの無相  → 半兵衛イベント の後の話になります。

 

半兵衛を失くしはしたが天下は未だ秀吉の元にある。

秀吉は主な武将を集め、
改めて今後の指針についての軍議を執り行った。

「これより、
半兵衛と共に描いていた未来を現実のものとせんがため、
世界を目指す」

秀吉の第一声はそんな宣言だった。

「秀吉公、それは」
家康が躊躇い勝ちに口を挟み掛ける。
時期尚早ではないのかと。
差し出がましいとわかっていながら、見過ごすことは出来なかった。
だが。

「STOP」

家康が反論する必要はなくなった。
この場に、
秀吉に捕らえられて以降ずっと部屋に閉じ籠っていた政宗が
扉を開け姿を現したが故に。

政宗は秀吉の元へつかつかと一直線に歩を進める。

結構な至近距離で足を止めると、見上げ、
威圧的に見下ろしてくる秀吉に臆することなく強い眼差しを向ける。

「天下を獲ったら直ぐ次、じゃあ兵は消耗するだけだろ。
疲れを知らないカラクリじゃねーんだ。
少しは労って休ませてやれ。
それに」

政宗はちらりと視線を流し
列席する武将達を横目で冷たく視た。

「アンタの天下が磐石と言えるのか?
留守にしてる間にとって変わられてました、なんてのは
笑えねぇJOKEだぜ」
「…独眼竜」
家康は政宗の言葉に驚く。

そうなれば、
政宗を連れて行かれる事になるにしろ、
小十郎を残す奥州伊達にとって
天下を覆す願ってもいない好機であろうに。

「半兵衛を失ったアンタはどれだけ策を練れる?
そこに雁首揃えてるやつらだけで世界と渡り合えると本気で思ってんのか?
負け戦をするためにのこのこ出掛けるなんざ愚の骨頂だろ。」

歯に衣を着せぬ政宗の物言いに、
三成はたまらず激昂した。

「貴様!
黙って聴いていれば秀吉様に対しなんと」
「黙せよ三成」
「……っ! っは…っ」
敬愛する秀吉本人に制され、三成は項垂れ口を噤む。

秀吉は不思議そうに政宗を眺める。
どういう風の吹き回しなのか。
心情の変化が、まるで解せなかった。
自分を毛嫌いしていたはずの男が助言しに来るなどと。

「ならば、貴様はどうするのが最善と言うのだ、
政宗」
「決まってる。
NETWORK作りが基本だろ。
アンタがこの国の本当のTOPになるためにゃあ
情報や人脈はきちんと管理しねぇとな。
魔王のオッサンの二の舞にゃなりたかねーだろ?」
「…ぬ」

政宗の言う「魔王のオッサン」が
側近の部下である明智光秀に討たれた織田信長の事だと言うことは
直ぐにわかった。

「秀吉様に反旗を翻す愚か者がいると言うのか!」
再び三成が声を荒げる。
「不満はあればいずれ爆発するもんさ」
「秀吉様に不満など抱く者などこの世には存在しない!」
「…石田三成。
じゃあ俺は何だと思うんだ?」

秀吉はその言葉に密かに眉を動かした。
それは、政宗が秀吉に不満があると言っているようなものだ。

「…き、貴様は…
秀吉様に…だから…殲滅されるべき!」
「三成!」
武器が有ったら抜きかねない剣幕の三成に家康は制止の声を上げる。

政宗は家康に一つ眼を向けた。
問題ない、と語るように。

「全員が全員アンタなら秀吉サマも心配は要らねぇだろうがな。
俺みたいなのは意外とその辺にだって転がってるモンさ。
you see?」

動じる様子ない政宗に、三成はますます怒りを募らせる。

「ならば貴様は何故此処に居る!
わざわざ戯れ言を宣うために来たとでも言うのか?!」

「……何で、だろうな。」
政宗は自嘲の笑みを浮かべた。

「この軍が瓦解しようが
そこの大将が自滅しようが知った事じゃねぇ、
筈だが」

政宗からすればその方が有り難い。

「ただ…」

そっと、秀吉に視線を向ける。

半兵衛との会話。
夜の天守閣での邂逅。

境遇に嘆き、じっとしているのは楽だ。
けれど、余りにも無為な時間の過ごし方だという自覚があった。
それを歯痒く感じている己に目を背けるのは愚かしいと。

「…勿体無い、と思ってな」

知らずにいるのも。
動かずにいるのも。

「………?」
「ま、確かにアンタの言う通りただの戯れ言だ。
豊臣軍の一員でもねぇ俺の言うことなんざ
聞き流してくれて構わねぇさ」
「………」
肩を竦め立ち去ろうとする背に、
秀吉はかける言葉を探しあぐねた。

「秀吉様」
三成はそれで良いと安堵し
「秀吉公」
家康は引き止めて欲しいと願った。

秀吉は瞳を閉じる。
心の中では既に結論を出していた。

後は、高らかに告げるだけだ。

「この先の軍議には政宗を加える。意見番として。
政宗、我の隣に来い」
「っ秀吉様…?」
「秀吉公…っ!」

「…良いのか?」
「うむ。
だが次回からは簡易でも戦装束を着て貰おう。
用意せねばな」
「ah、着てたヤツ返してくれればそれで済むんだが」
政宗がこの場に踏み込むのに一番勇気を必要としたのは、
武装した武将たちの中に着物一枚で飛び込むことだった。
それを、見透かされたような気がして憮然とする。

再開した軍議の結果、
豊臣軍の方針は
先に国内の地盤をしっかり固める事になった。
政宗の忠告に従うように。

秀吉は政宗が自分の国作りに参加する気になった事を
疑問を抱きながらも歓び、
三成は煩わしいと思い、
家康は純粋に頼もしく感じた。



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こっから3つぐらいルートが分かれます。
秀吉・三成・家康…かな。

一番書きたいのは3人と仲良くする話ですが!
(乙ゲーとかでもラヴラヴな個別EDよりラヴ薄めの全キャラEDが好きな人間ですのでー)

くりすます? 何それ美味しいの?
                                【20101225】