深淵よりきたる / 劇場版;三成←政宗

 混沌よりいずる の続。 

         

何者かの策略により第六天魔王と恐れられた信長が復活した。

誰が画策し、どんな手段を用いたのかはわからない。
だが、倒し、還さねばならない相手だと言うことは
そこにいた全員が理解した。

生前よりもより強力に、凶悪になった信長は
日ノ本に脅威しかもたらすまい。

「あれは、お市殿の…」
立ち向かおうとした面々の中で
真実に一番近いところにいたのは幸村であった。
黒い手、それが信長に力を注いでいる。
その手に幸村は安土城跡で遭遇した。
信長の妹である市が操っていたように見えた、
黒く禍々しいモノ。

だがそれだけだ。
それ以上の事はわからない。
考える時間もなかった。

一丸となり立ち向かわなくてはならぬ相手。
中心部の近くにいた政宗達には
闇雲に攻撃する、以外の選択肢はない。

かつて信長であったものの頭上に浮かぶ魔王のごとき影が生み出す衝撃波で
幾度となく隆起した地面に叩き付けられる。

それでも身体の動く限り抗い続ける四人が
連携し、全身全霊の技を喰らわせても尚
弱らせることのかなわなかった信長を穿ったのは
独りで戦う姿勢を崩さなかった三成の刃だった。




絶望を抱きながら挑んだ戦いの最中。
信長の発した秀吉への罵倒の言葉に
激昂し、無謀とも言える状況で討って出た三成を
大谷が庇い、倒れた。

歩みより、抱き抱え、
流された血涙と吼えた哀しみに、
政宗はそっと眸を閉じる。

秀吉と、半兵衛だけが大事。
言動からはそう読み取れた。
だからこそ秀吉を倒した政宗が憎くて赦せなくてたまらなかったのだろうと。

だが。

「アンタは…また亡くすのか。
アンタ自身が気づけずにいた大切なものを」

今彼に訪れているのは二度目の死。
秀吉と、そして半兵衛が破れた事で一度死に、
おそらく大事な仲間を悼みもう一度。

政宗は瞼の裏に焼き付いた三成の澄んだ眸を思い出す。

先程の、一騎討ちの終焉で
中空に貼り付けた三成にとどめの一撃を放つ瞬間。
政宗の放つ雷光に照らされ見えた表情は。

秀吉を倒した相手に自分も倒される
安堵にも似た諦観の―…

だから政宗はあの時、思わず。

政宗はゆっくり身を起こすと
近くにいた家康に声を掛けた。

「家康。
アンタはあそこで石田を助けちゃなんなかったんだ」
言葉は足りなかったが
家康にはそれが政宗の技から三成を救った時の事だとすぐにわかった。

「独眼竜?
だがお前は」
三成に引導を渡そうとしていただろう、と。
続けようとしたのだろう。
豊臣軍に身を置いていた家康が
同僚である三成を死なせたくなかっただろう気持ちはわかった。
だが友と言うならば、尚更。

「あの男はあの技で死にはしなかった。
それよりも、変な喰らい方をしたアンタの方がヤバかっただろうぜ」
「そう…だな。お前の技は結構効いたぞ」
「そうなれば」

誰が庇えと言った。のたれ死ね。

三成が家康に投げ掛けた言葉。

「アイツは多分、更に心に傷を負っていた」

思い過ごしかも知れない。
けれど、言葉を交わし、
視野の狭さと無器用さの他に
潔さとまっすぐさが伝わってきた。
その印象が確かならば。

「アンタはあの男を置いて死ぬべきじゃない」
「独眼竜…?」

三成に抱えられている男を視る。
誰かは知らない。
けれど二人が互いに想い合っていたのは一連の行動でわかった。

だけれど三成を庇った男はわかっていなかった。
それは三成の生命は救えても、心を再び殺してしまう事に他ならないと。

「ついでに、あの男もまだ死なせたくねぇ」

小十郎や佐助が力の源と思われる黒い「根」を断ちに回っている。
無限の復活さえ抑えれば倒す事は不可能ではない筈だ。



そして三成の渾身の一撃で首から黒い霧を噴出させた信長は
現れた妹―市の手により地に沈み、還り、

用意周到だっただろう誰かの企みは
その首謀者がわからないまま呆気なく終わりを告げた。

地盤の崩壊と共に。
 

                                                    →  暁天よりのぞむ 

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二回観たんだけど色々うろ覚え。

多分もう一話あるけどそっちは更にうろ覚え部分だぜ!(威張れない)    
       

                                     【20110629】