日就月將 参


 【壱】      【弐】        

 

 

伊達政宗の記憶を持つ政宗としては、
逢えたならば訊きたいことがあった。
それは当然、
「モトチカとサスケは元気か?」
まだ「再会」出来ていない二人についてだ。

口にしたあと、政宗は何かを思い出したようにはっと息を呑む。

「ってもサスケはまだ元気じゃないのか。
あっち行ったのは
俺…じゃない、政宗が還ってから一週間後とか言ってたっけ。
祭がどーこー言ってた」
「…なに?」
「っと」

失言、と口を押さえる政宗のその手を
元就はがしっと掴んだ。

「今なんと?」
「悪い。今のナシ」
「あやつはそちら…あちらに行けたのか」
「…?」

政宗は元就の表情に首を傾げる。
純粋に喜んでいる、ように見える。

あちらに行った―こちらから来た佐助が言っていた。
「ナリさんも政宗が好きなんだとばっかり思ってた」
と。

あちらの政宗は
自分に向けられる恋愛にまつわる心情や慾にはに相当疎かったようだが、
ここでの生活の様子の記憶を受け継ぎ
客観的に観察した政宗にもそう感じてられた。

だからこそ、元就の事が一層気になった。

「その言い方ならば戻ってきた時には元気になっているのだな」
「た、多分。」
わからない。

安心している。
意外と友人想いな面があることも知っていた。
だから、それを考えればおかしな反応ではない。

自分も佐助も、
元就の政宗に対する想いを履き違えていたのだろうか。

政宗が困っているのを感じ取ったのか、
元就はすっと引いた。

「…そろそろ診察時間になるな。
悪いが病院の方から改めて入って窓口で受付を―
どうした」

余程表情が強張っていたのか、
元就は政宗を気遣うように窺った。

「…今日は」
緊張で口の中がからからになってしまっていたため、
掠れた声が出る。

政宗はごくりと喉を鳴らし唾を呑み込んだ。

「俺はアンタの患者として来たけど
また、来ても良いか?
その…病院にじゃなくて、遊びに」

もう逢う用事はない。
天下統一の報は元就から他の二人にもたらされるだろう。
「政宗」と違い、政宗は友人でもなんでもない。
記憶があるだけで、同一人物ではないのだ。

だが、繋がりを失くしたくはなかった。

「―そうだな」
元就はふわりと微笑んだ。
基本的に無表情なのだが
感情の動きは雰囲気で読み取れる。
今はとても柔らかい。

「後の二人にも逢いたいだろう。
連絡を入れておく」
「あー、さすけには」
「わかっている。後五日は内緒、だな。
で」
「ん?」

直ぐにでも出ていきそうな様子の政宗に
元就は苦笑した。

「連絡先は教えてくれぬのか?
診察でも顔を合わせるだろうが
そこで訊くのは医者としてのモラルが問われかねん」
「―あっ」

慌てて自分の携帯電話を取り出す政宗の様子に
元就はそっと目を伏せる。
これは、政宗であって政宗ではない、と
確信できたと。

                                   【肆】

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

よし、前振り終了。

                                                  【20101021】