政宗出奔 IN武田家Ver.


 「戻ったか佐助。
それで、近隣諸国で何か動きはあったか?」
「不穏な動きは特に…あ、けど」
「どうした?」
「伊達の若様が単身出奔したって話を聴きましたよ。」
「伊達の小倅がか?」
「跡目争いに嫌気がさしたってとこですかねぇ」
「…佐助。其奴、何歳だったか知っておるか」
「確か、齢十五って話聴いたような…
ってお館様? まさか」
「うむ。こちらに引き入れられやせんかと思うてな」
「ちょ、やめてくださいよ。
ただでさえ真田の旦那が喧しいのに
この上そんな難しそうな子なんか」
「幸村の相手には丁度良かろう。
佐助」
「…仕方ないね。捜し出して打診してみます」
「任せたぞ」
「はいはいっと」

 
 
■佐助君のスカウト大作戦

佐助は政宗を見つけた。
見つけたは良いが、
どう話し掛けるかまるで考えていなかった。

「えーっと、伊達の若旦那。
ちょっといいかなー?」
「良くねぇ。じゃあな」
「ちょ、何でっ?!」
「俺は『伊達の若旦那』じゃねぇし忍と話す用事もねぇ。
you see?」
「ゆーしーって言われましても。
や、俺様自身もアンタに用はないんだけどさー。
うちの大将はそうじゃないみたいで」
「虎のオッサンが?」
「………?!
な、何でそれを?!」
「ha、やっぱりそうか」
「?! カマかけたのっ?」
「様子見もナシでちょっかい出してくる物好きは
虎のオッサンあたりかと思っただけだ」
「…アンタ…」
「?」
「うちに来ない?
多分、大将もそのつもりなんだろうけど、
俺様もアンタの事気になっちゃった」
「…気に入った、じゃねぇんだな。」
「いやあ。俺様嘘吐けない質なもんでー」
「それが一番嘘臭ぇが…
okey、良いぜ。案内しな」
「良いの?!
…アンタって本当…」
「ah?面倒臭い。厄介。ややこしい。天の邪鬼。どれだ?」
「…面白い子だよね」
「……っ?!」
「あ。やっと年相応の表情が見れた」
「…おかしなヤツ」
「あっは、褒められちゃったよ」

 

■甲斐の虎との顔合わせ
 
「お待たせー大将」
「おお。戻ったか佐助。
初めてお目にかかるな、伊達の」
「俺はもう伊達じゃねぇ」
「しかし苗字がなければ不便であろう」
「なくても問題ねぇ。
名前だって変えても良いぐれぇだ」
「ふむ」
「…大将、いやらしい表情になってるよ?」
「政宗、だったな。
武田を名乗ってみるか?」
「…りぃありぃ?」
「ん。政宗くんたまに意味がわからない事言うよね。
奥州訛り?」
「異国語だ。
ah、酔狂にも程があんだろオッサン。」
「ははっ。早急すぎたか。
行く当てが無いならば暫く甲斐に留まってはどうだ?
行きたい所があるならばワシの方から紹介状を書いても良い」
「…少しの間、厄介になる」


■虎の若子との遭遇

「政宗殿と申されるのか。
某、真田源二郎幸村でござる。以後、宜しゅうお頼み申す」
「ああ。短い間だが世話になる」
「…短い、間?
政宗殿はお館様の養子になられるのではなかったのですか?」
「what?!
何だって? もっかい言ってみろ真田幸村」
「ですから、武田の子になられると。
屋敷の者達も皆そう聞いていると…
如何なされた?」
「shit!あのオッサン、外堀から埋めて来やがった…!」
「政宗殿?」
「アンタもアンタだ真田幸村!
虎のオッサン…『お館様』を敬愛してんなら
何処の馬の骨とも知らねぇ俺を簡単に認めてんじゃねぇ!」
「お館様の御決断に間違いはござらん!」
「今現在大間違いしてるだろうが!」
「某はお館様の見る目を疑いはいたしませぬ。
某にも、政宗殿は立派な御仁とお見受けいたします!」
「…やれやれ。調子狂うぜ…」 
 

■気になる荷物

「時に政宗殿。
その御荷物、大事にしておられるようでござるが
何なのか訊いても?」
「…ああ。俺の武器だ。
他で揃えるのが面倒だからな。これだけは持ってきた」
「なんと!
政宗殿も戦われるのでござるか!
それでしたら、是非この幸村とお手合わせして戴きたく!」
「…allright、久し振りに熱くなれそうだ」
「おーおー二人とも楽しそうだねー。
もしかして似た者同士?」


■イメージカラー

「政宗って赤より青が似合う感じ」
「…何の話だ? 忍」
「俺様には猿飛佐助っていう立派な名前があるんですけど?
…じゃなくてほら。
武田と言えば赤揃え。
政宗も武田の一員として戦場に出るなら
赤い陣羽織や装具を誂えないとーって思ったんだけど、
政宗って青の印象なんだよね。
まあ、赤も似合わないことないだろうけどさ」
「武田の兵士として戦に出るつもりはねぇ」
「伊達…奥州とは戦の予定はないよ?
それに政宗は兵士じゃなく武将の扱いだろうね」
「何処と戦おうが関係ねぇ。…必要ねぇだろ?
この軍にはやたら強い大将と、真田幸村と、アンタがいる。
俺ごときが出ても出番はないさ」
「…アンタやっぱ大将の跡継いだら?」
「…ぱーどぅん?」
「アンタ、育ちのせいかも知んないけど
すっごく総大将の器に感じるんだよねぇ…」


■呼び方呼ばれ方

「某、真田源二郎幸村でござる。
以後、宜しゅうお頼み申す」
「おう。宜しくな、源二郎」
「……
そ、某真田げ」
「それは聴いた。
だから源二郎だろう?」
「………で…」
「源二郎?」
「出来れば、幸村と呼んで戴きたく…っ!」
「ah?
良くわからねぇが…承知したぜ幸村。」
「はいっ!」


 ■本篇(遠雷 → 雷動 → 竜の帰還) 後

「政宗様、その馬は」
「武田から届いた。
当主就任の祝いだとよ」
「なんと。武田騎馬隊の馬を賜わりましたか!
直ぐに丁重に御礼申し上げねば!」
「ああ。
…っとに粋な事してくれるオッサンだぜ」
「いかがなされた?」
「あの戦いに乗り付けた時の馬だ。
武田で俺が一番気に入ってた、な」
「共に届いた文には、
あちらでは特に名は付けていなかったとありますね」
「all right! ならこいつは源二郎だ!」

「………っ?!」

「……政宗様」
「ほっとけ」
「…武田の忍が動揺して気配をだだもらす程の
その名の由来をお聞かせ願いたいのですが」
「気にすんな。」

                                               続→ 【遠雷】  
         
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武田家に拾われたヴァージョン。
でもやっぱ筆頭は「筆頭」なんだよなあ…

                       【20101227~20110113;
                                                            後半二本/20110211~20110226;拍手御礼用】